追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「なぜ?」
「陛下はもっと、自分のお立場を自覚するべきです!」
「俺は好きで、皇帝になったわけではない。病に倒れた母の面倒を見るために父が前線を退いたので、仕方なく空いた王座に腰を据えたけだ」

 長い間王座が空白だと、無駄な争いを産みかねない。
 そんな危惧から、予定よりも早くダリウスが皇帝としてこの帝国を治めるようになったようだ。

(私は、てっきり……)

 ラシリネは勝手に最悪な想像をしていた己を恥じ、彼に恐る恐る問いかけた。

「ご両親は、ご存命なのですか……?」
「ああ。母は、随分と弱ったが……。父も、肉体的には健康そのものだ」
「よかった……」

 ダリウスの両親とは、自分も何度か直接話をした覚えがある。
 彼によく似て、とても優しく頼りがいのある大人だった。
 ラシリネが彼らの無事を知ってほっと胸を撫で下ろした時、陛下からある提案を受けて面食らう。

「会うか?」

 まさか隣国にやってきてすぐに、表舞台から退いた前皇帝夫妻と顔を合わせる機会を得られるなど思わない。
 ラシリネは慌ててぶんぶんと左右に首を振り、陛下の申し出を固辞した。
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