追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
 そうしてゆっくりと彼女のほうを見つめ、至近距離で目を合わせた。

「もう、陛下が自ら剣を振るう必要はありません! これからは私が、この帝国をお守りします!」

 ラシリネは無事に障壁を張り巡らせ終えたからか、上機嫌のようだ。
 自信満々に快活な笑顔を見せる姿は、とても愛らしい。

(ああ……。その笑顔が誰にも見られないように、今すぐ腕にいだいて閉じ込めてしまいたい……)

 心の中で、言いようのない独占欲が暴れ回る。
 声を発したら「誰にも笑いかけるな」と命じてしまう気がして、ダリウスは固く口を閉ざすしかない。

「やはり、陛下は……。私が聖女になったことを、喜んでくださらないのですね……」
「違う!」

 彼女は「この状況を納得できないから無視をしている」と判断したらしい。
 悲しそうに目を伏せたため、大声で否定をしてしまう。

(彼女が聖女になってしまったのがつらいと、女々しく落ち込んでいる場合ではない……)

 彼女は解任式を行わない限り、これから生涯聖女で居続けるのだ。
「普通の女の子でいてほしかった」と言う願いが叶わないのであれば、
 この想いは心に秘めたまま、影から彼女を支えるべきだ。
< 111 / 254 >

この作品をシェア

pagetop