追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「そんな! 私なんかが、恐れ多いです……!」
「両親も、君の身を案じていた。もしよければ、顔を見せてやってほしい」

 紫色の瞳が、じっとこちらを見つめている。
 その目の奥に、嘘はない。

(意固地になっている場合では、ないのかも知れないわね……)

 ラシリネは恐る恐る、彼の顔色を窺いながら問いかけた。

「わ、私なんかが、本当に……いいのですか……?」
「ラシリネだからこそ、会わせたいんだ」

 ここまで望まれて、拒むほうがどうかしている。
 ラシリネは悩んだ末、彼の提案を受け入れると決めた。

「陛下がそう、仰るのでしたら……。お会い、したいです……!」
「ありがとう。君なら、そう言ってくれると思っていた」

 彼は優しく口元を綻ばせ、こちらの選択を喜ぶ。
 こうして2人は行き先を変更し、前皇帝夫妻の暮らす離宮へと足を運んだ。

「おお、ちょうどいい所に」
「まぁ……!」

 寝台の上に横たわる女性はラシリネと目を合わせた瞬間、感極まった様子で瞳から大粒の涙を流した。
 思わずぎょっと目を見張りながら隣に佇む陛下へ助けを求める視線を送れば、呆れたような彼の声が室内に木霊した。
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