追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「陛下……?」
「は、ぁ……っ。は……っ。油断も、隙もないな……!」

 皇帝は忌々しそうに吐き捨てると、額から滝のように流れ出る汗を拭った。

「急いで、駆けつけてくださったのですね……」
「悪いか……」

 ダリウスはぶっきらぼうにそう言い放ったあと、苦しそうに視線を反らした。
 今さらながらに、2人の間に気まずい空気が流れていたのを思い出したのだろう。

「いいえ。とても、嬉しいです。俺の、と称してくださったことも……」
「あ、あれは! わ、忘れろ!」

 陛下は一際大きな声を上げると、顔を真っ赤にして慌てふためく。
 どうやら目の前の危機が去り、失言に気づいたらしい。

「い、言い間違いなんだ……っ。君の名を、呼ぶべきではなかった!」
「では、誰の名を呼ぶつもりだったのですか?」
「そ、れは……っ」
「私以外の、可憐で素敵な、お慕いしている淑女のお名前であれば……」
「そんなものはいない!」

 耳まで赤らめる彼は、普段の冷静沈着な姿からは想像もできないほどに年相応だ。
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