追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
(10年前に比べて、自分と大人っぽくなったと寂しい気持ちになっていたけれど……。皇帝として相応しき殿方になるべく、努力を重ねた結果だったのかもしれないわね……)

 ラシリネは意外な一面を垣間見て、ますます彼のことが愛おしくて堪らなくなる。

「もう二度と、勘違いなんてするんじゃないぞ。いいな!?」
「はい」

 このまま「俺のラシリネ」とはどういう意味だと探りを入れたかったが、関係が悪化するのだけでは避けたい状況では、どうしても一歩を踏み出す気にはなれない。

(今はこうして陛下から抱きしめて頂けただけで、充分だと思わなければ……)

 ラシリネは幸せで堪らないと言わんばかりに、金色の瞳を和らげる。
 そんなこちらの姿をじっと見下していた彼は、うんざりとした様子で吐き捨てた。

「スノーエルがいれば危機的状態に追い込まれることはないと、勝手に信じていた俺が馬鹿だった」

 陛下はこれまで、神獣を護衛代わりに使っていたようだ。
 しかし、こうして問題が起きた以上、その役割を担えるほど鍛え抜かれた戦士ではないと気づかされたのだろう。
 彼は大きな図体を窮屈そうに屈めてラシリネと顔を近づけると、耳元で言い聞かせた。
< 124 / 254 >

この作品をシェア

pagetop