追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
 だが……。

 ラシリネが聖女になると強い意思を固め、絶望に打ちひしがれる男が頼りにならぬ状況である以上、どうしようもない。

「ダリウス様。今まで私に優しく接してくださり、ありがとうございました」
「駄目だ……っ! 行かないでくれ!」
「どうか、お元気で」

 姉は口元だけを綻ばせると、馬車に乗り込む。
 そうして、自らの意思で王城に向かってしまった。

「うわぁああああ!」

 ただ手を拱いて見ていることしかできなかった少年の雄叫びが、耳障りで仕方がない。

(なんでもっとちゃんと、姉様と緻密な作戦を練っておかなかったわけ!?)

 せっかく聖女になれるチャンスだったのに、これでは何もかもが台無しだ。

(こいつに先導させたのが、失敗だったわ……)

 隣国の皇太子で、自分よりも6つも年上の男。
 そんな理由だけで共犯関係になろうとしたのが、間違いだったのだ。
 いつものように「あたしに従いなさい」と命じれば、うまくいったかもしれない。

(悔しいけど、あたしが聖女になるって話はナシね。諦めましょう)

 アオリはみっともなく泣き喚く少年に背を向け、歩き出す。
 もう二度と、顔を合わせる機会はないだろうと考えながら――。
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