追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
 己が姉の張り巡らせた障壁を塞いだ時点で、聖女がどういった存在なのかを知る人間であれば真っ先に違和感をいだいていた状況だ。
 なのに、この男はこちらを「偽物」と罵るどころか「本物」と崇めた。

(それだけ、姉様が役立たず聖女ってことなんでしょうけど……)

 なんとも言えない複雑な感情をいだきながらその場に佇んでいると、あっという間にこの場へ連れてこられた姉の追放劇が始まった。

「アオリ……」

 彼女からしてみれば、この状況はまさしく青天の霹靂であったに違いない。
 己の力不足によって生じた勘違いとはいえ、ラシリネこそが聖なる力を持って生まれた真の聖女なのだから。
 まさか10年も経ったあとに妹が「自分こそが本物だ」と名乗り出て、聖女の座を奪い取ろうとするなど夢にも思わない。

「この国を、お願いね……」

 姉も長い間ハズレ聖女と呼ばれ続け、疲弊しているのだろう。
「これはきっと何かの間違いだ」と声を荒らげることもせず、素直に陛下の決定を受け入れた。

(いいご身分よね)

 去りゆく姉の背中を睨みつけながら、アオリは思う。
 こちらの都合も考えず勝手に行動して計画をめちゃくちゃにした挙げ句、彼女を諦めなかったダリウスによって永遠に幸せになる権利を手に入れたのだから。
< 138 / 254 >

この作品をシェア

pagetop