追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
 無理やり扉を開けようとしたので、触り心地のいい毛並みへ強引に触れ、己の元へ引き寄せた直後――内側から、ドアが開いた。

「もう俺とのわだかまりは、解消されたのではないのか?」

 大好きなのに、一番会いたくなかった人と顔を合わせてしまい、どんな反応をすればいいのかわからなくなる。

(ここで露骨に無視をすれば、また陛下とギクシャクしてしまうわ……)

 せっかく和解したのに、それでは意味はなくなってしまう。

(普通を装うのが、一番よね……)

 ラシリネは悩んだ末、取り繕った笑みを浮かべてこの場を乗り切る道を選んだ。

「ランニング終わりなものですから。身を清めてから、陛下のおそばにいようかと……」
「必要ない。おいで」

 彼は何度かこちらに向かって手招きをすると、執務室の中へ戻って行った。

(陛下の隣でパンツスーツ姿のままというのは、どうなのかしら……?)

 自分でも貴族としてあるまじき姿をしているとよく理解していたこともあり、陛下を待たせてでも予定通り着替えるべきなのではと躊躇する。
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