追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
 しかし――。

 2人の仲を応援しているスノーエルが気を利かせて元気よく彼の背中を追いかけてしまった手前、自分だけが休憩室に引っ込むわけにはいかなくなってしまった。

「待って! スノーエル!」
「わふん!」

 ラシリネは渋々神獣の元へ向かい、定位置に腰を下ろした。

(なんだか、落ち着かないわ……)

 いつもと違う姿で陛下の隣に座っているからか。
 それとも、妹と顔を合わせて心を乱されたせいか――。
 ラシリネは落ち着きのない様子で、そわそわと金色の瞳を揺らす。

「わふん!」

 そんなこちらの姿を見て、「このままはよくないだろ」と気を利かせてくれたのかもしれない。
 珍しく仕事中の陛下にちょっかいをかけに行ったスノーエルは、何度もクイクイと彼の裾を己のほうへと引っ張った。

「邪魔をしては、駄目でしょう? 陛下は、お仕事中なのよ」
「わふ?」

 神獣は「仕事よりもラシリネと話すほうが大事じゃねぇの?」とでも言わんばかりに不思議そうな表情を浮かべる。

(まったく、この子は……)

 スノーエルは神の化身だ。
 あの方の意思に忠実で、いつだってすれ違う自分達の仲を取り持つべく忙しなく走り回っている。
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