追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「陛下がアオリと想いを通じ合わせていたとしても、私は何かを言える立場ではありません……」
「待ってくれ」
「聖女が人間を愛し恋仲になれば、天罰が下るのですから……」
「ラシリネ!」

 己の指先を包みこんだ大きな手に、力が籠もる。
 ラシリネは大きな声で名前を呼ばれ、言葉を1度止めた。
 金色の瞳からは堪えていた涙が頬を伝ってこぼれ落ち、彼の手のひらを濡らした。

「君が心の底から俺を嫌悪していているのなら、仕方がない。ラシリネがどんな勘違いをしていようとも、それを正すことなくこの手を離した」
「陛下……?」
「だが……。違うだろう?」

 彼は「何があってもこの手は離さない」と言わんばかりに、握りしめていた拳を緩めた己の指先を絡め取る。

「言い伝えを信じて身を引こうとしているのならば、止めてくれ」

 紫色の瞳は、真剣そのものだ。
 それが嘘か真実かなど見極める必要などないくらいに、強い想いが込められている。
 それでも――自分には、彼の指示通りのはできぬ理由があった。
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