追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「大好きな人が、私のせいで死んでしまうかもしれないんですよ!? 素直な気持ちなんて、言えるはずがありません……!」

 ラシリネはどうしても、ダリウスの隣に並び立つ権利を失いたくないのだ。
 だから、妹に対する嫉妬心も、彼に対する恋心すらもすべて己のうちに秘め、何事もなかったかのように平気なふりをした。

「この恋を成就させたら、天罰が下るとわかっているのに! あなたのそばにいたら、もっと好きになってしまう……! だから、離れようとしたんです……!」

 陛下は「逃げるな」と、己の指先を絡める。
 それがラシリネにとっては、つらくて仕方がない。

「私はこの十年間、その選択をずっと後悔していました」

 わかっている。
 もっと感情を押し殺し、冷静に語らなければいけないと。

 わかっていた。
 こんなふうに思わせぶりな態度を取れば取るほど、互いに苦しむだけだと。

「あなたの手を取ればよかった。陛下の言う通りに神を欺き、聖女の役目を押しつけていれば……」

 それでも、ラシリネはそうした態度を取るのを止めらない。

「私はもっと早くに、幸せになれたかもしれない……!」

 幼い頃からずっと、彼を想っている。
 その気持ちに、嘘はつけなかった。
< 158 / 254 >

この作品をシェア

pagetop