追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「ラシリネ」

 ラシリネは嗚咽を漏らし、みっともなく涙でぐちゃぐちゃになった顔をどうにかしようと目論み左手で目を擦る。
 だが、眼球が傷つくのを恐れたのだろう。
 陛下に手首を掴まれて制されてしまった。

「もう、答えは出ているじゃないか」
「ち、違います……っ! 全部、忘れてください……!」
「絶対に嫌だ」

 彼は左右に首を振って涙ながらに語るラシリネの懇願を拒絶すると、目元を擦るために浮かせていた手の甲に口づけを送った。

「ダリウス様……!?」

 こちらは咄嗟に身体を離そうと試みたが、それは叶わない。

「話してくれて、ありがとう」

 陛下が紫色の瞳の瞳を優しく和らげ、口元を綻ばせたせいだ。
 金色の目からは、嬉し涙がこぼれ落ちる。
 それを必死に止めようとしゃくり上げれば、手首を胸元へ引き寄せられた。

「わ……っ」
「自分は聖なる力を持って生まれた聖女だからと、心を殺して生きる必要はない」
「で、ですが……! そんなことをしたら、陛下が……!」
「己の欲望に、素直になれ」
「神が、お許しになりません……」

 ラシリネは心の奥底に沈めておくべき感情を吐露してしまった自らを恥じ、悲しそうに目を伏せた。
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