追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「君は自国で十年間、俺がそばにいない苦しみを孤独に耐え続けていたのだろう?」

 しかし、ダリウスはここで話を終わらせるつもりはないようだ。
 彼はこちらを覗き込むようにじっと見つめると、優しく語りかけてくれる。

「神々が俺達を引き裂こうと猛攻を仕掛けてくるのなら、返り討ちにしてやる」
「陛下……」

 聞こえてくる声があまりにも意外すぎて、思わず顔を上げてしまった。

(綺麗……)

 陛下と、視線が交わる。
 すでに、覚悟を決めているのだろう。
 紫色の瞳には、確かな決意が宿っていた。

「ほかに、俺を拒む理由は?」

 その目をじっと見つめているだけでも、痛いほどに彼の想いが伝わってきた。
 あとは自分が、勇気を出せばいいだけだ。

(もう、心の奥底に秘めた願望を隠し続ける必要はないのね……)

 ラシリネは彼と無理やり絡められた指先に自らの意思で力を込め、恐る恐る問いかけた。

「陛下はアオリと逢瀬を重ね、彼女と並々ならぬ関係になったのではないのですか……?」
「存在しない想い人を空想したり、妹と俺を恋仲にしたがったり……。君は本当に、想像力が逞しいな……」
「やっぱり……!」
「違う」

 ダリウスははっきりとした口調できっぱり「そんな事実はない」と否定し、誤解を正す。
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