追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
 妻と息子の姿を目にした前皇帝は、おかしくて堪らないと言わんばかりの意図を含ませながら、冷静な言葉を吐露した。

「普段は冷静沈着な息子が、ここまで感情を揺れ動かすとは……。やはり君は、ダリウスにとってなくてはならぬ存在のようだ」

 彼の父親からそんなふうに思ってもらえるなど、夢のようだ。

(光栄だわ……)

 ラシリネが満面の笑みを浮かべて会釈を返すと、微笑みを浮かべた皇太后が歌うように声を発する。

「息子に親近感が湧くようなエピソードは、まだまだあるのよ」
「母上……。もう、止めてくれ……」
「いいえ。離れていた間の長い時間で、どれほどあなたがラシリネちゃんを思っていたのか。知ってもらわないと……」

 陛下は恥ずかしくて仕方がないのか、ついに頭を抑えて懇願し始める。
 しかし、そんな息子の姿を見ても、皇太后は容赦ない。

「お見合いを勧めたら、自分には心に決めた人がいると豪語するほどですもの。ダリウスは一度こうと決めたら、絶対に曲げない子よ。きっと、その通りになるわ」

 クスクスと笑い声を上げて嬉しそうに紡がれた言葉を聞いた直後、ラシリネは冷や汗が止まらなかった。
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