追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「嫌なことを、思い出させてしまったかしら……?」
「今の会話に、ラシリネ嬢が傷つくような不自然な点はなかったはずだ」
「ならばなぜ、彼女はこんなにも怯えている?」
「それを確かめるのが、お主の役目であろう」

 父親に促された息子は、難しい顔をしながら思案を続ける。
 その後、紫色の瞳を妖しく輝かせると、こちらの右肩へ触れようと手を伸ばし――。
 そうして、不思議な現象が起きた。

 ――バチッ。

 彼の指先が透明な壁に挟まれ、雷のような衝撃波が走ったのだ。
 これにはラシリネも驚きを隠せぬまま、祈るのを止めて目を見張るしかない。

(どうして……?)

 自分が聖女としてできるのは、国全体に障壁を張り巡らせることだけ。
 こんなふうに己の身を守るなんて、不可能なはずだった。

「これって、聖なる力よね……?」
「うむ。彼女を守ろうとしているようだ」
「ダリウス! ラシリネちゃんに、何をしたの!?」
「母上……」

 己の身を守る術を無意識とはいえ展開できたのは喜ばしいことではあるが、大好きな彼が差し伸べてきた手を弾いてしまった件に関しては、悪手としか言えない。
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