追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
(よかった……)

 聖女はホッと胸を撫で下ろし、その場に倒れ込む。
 しかし、純白のドレスを纏った身体が土に塗れることはなかった。

 ――ダリウスが、恋人を抱き留めたおかげだ。

「よし! 突入せよ!」
「うぉおおお!」

 ラシリネを気遣うよりも先に1班と2班に別れた騎士団員達へ指示を出した皇帝は、彼らを見送ってから己を抱き上げた。
 どうやら、このまま妹や国王の待ち受ける王城へ向かうらしい。

「足手まといになってしまい、申し訳ございません……」
「いや、いい。俺は、浄化に関してはからきしだからな。これくらいは、させてくれ」
「ですが……」
「今はまだ序の口。本番は、このあとだ。今のうちに、英気を養っておけ」
「陛下のお心遣いに、感謝いたします……」

 彼の腕に抱かれたまま、ラシリネは薄目でアデラプス王国の状況を確認する。
 そこはまさしく、戦場だった。

 至るところで子どもが泣き叫び、我を忘れた人々が「自分はなぜこんなところにいるのか」と不思議そうにし、騎士団は魔の森から押し寄せてきた獣から己の身を守ろうとするので手一杯。

(エヴァイシュ帝国の王立騎士団がいなければ、もっと酷い惨劇が起きていたでしょうね……)

 ラシリネは早く彼らの手により、本来の平和を取り戻せますようにと願うしかなかった。
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