追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「ひ……っ」

 胸元で両手を組んで祈りを捧げていると、妹の引き攣った悲鳴が聞こえてきた。
 いくら魔具を手放していたとしても、彼女は契約を交わした身だ。
 闇のオーラが浄化されない限りは、その効果は永遠に持続し続ける。

(むしろ、このままの状態で器を破壊するほうが厄介だわ……)

 言いようのない怒りをぶつけて粉々に砕け散った魔具は、その感情を吸収して新たな脅威へと生まれ変わる。
 ラシリネは妹を守るために、闇のオーラを消し去ろうと必死になって祈りを捧げた。

「う……っ。ぁ、あ……! 痛いっ。苦しい……っ。つらい……!」

 しかし、アオリにとってはそれが「無駄」で、「己の苦痛を増強させる手段」でしかないのだろう。
 彼女は身体をくの字に曲げて呪詛を吐き出しながら、こちらへ手を伸ばす。

「こう、なったら……! あんたも、道連れよ……!」

 赤紫色の瞳に憎悪を孕ませ、地を這うような声が聞こえてくる。

(ここにいるのが、私1人なら……。きっとその声に怯えて、浄化するのを止めてしまっていた……)

 ――だが、ここには世界で一番信頼しているダリウスの姿がある。
 妹を救えるのが自分だけと来たら、彼女の願いに寄り添って祈るのを止めるなんて絶対にありえなかった。
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