追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「そうすれば、あたしは……! 少なくとも、罪人なんて呼ばれずに済んだ! そう! 全部! こいつのせいよ!」

 ――そうこうしている間に、アオリが黒幕だと断言する「あいつ」が「こいつ」に変わった。
 それは、この場に彼女の想像する人間がいると言うことだろう。

(考えられる可能性は……)

 ラシリネはすぐさま思い当たる節へ視線を移し、その人物を非難しようとした時だった。

「妹君は精神的に追い込まれ、頭がおかしくなってしまったようだ。休ませてやるべきだろう」

 己の耳元で、最愛の男性が助言をしてくれたのは。
 ラシリネはダリウスの口にした言葉の真意を探るべく、後方を見上げる。
 彼がしっかりと頷くあたり、このまま半狂乱に陥った彼女へ聞き取り調査を行ったところで、真実に辿り着ける可能性は低いと言いたいのかもしれない。

(そう、ね……)

 ここで悠長に話をしている時間は、自分達にはなかった。
 今も障壁が解除された市井では、魔獣を退けるべく王立騎士団が戦っている。
 早くこの領土をエヴァイシュ帝国のものだと神に認めてもらわなければ、死人が出るかもしれない大変危険な状況だ。
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