追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
 スノーエルの身体に取り憑いた神は、「彼女を危険な目に遭わせたくない」と言うこちらの意見を無視して、ラシリネに命じた。

「アオリの件は、お任せください! 私が、必ずや彼女を正気に戻してみせます!」

 聖女が神のありがたい言葉を断れるはずもなく、少女は2つ返事で了承してしまった。
 こうなった以上、いつまでも慌てふためいている余裕はないだろう。
 ダリウスは全力で彼女をサポートすると誓い、ラシリネとともにアデラプス王国へ足を踏み入れた。

「裏切ったのね……!」

 赤紫色の瞳に、憎悪が滲む。
 彼女はこちらが「偽聖女になってほしい」と持ちかけた10年前のあの日からずっと、こうなることを恐れていた。

『身の安全を保証して』

 アオリが偽聖女を名乗らなければ、ラシリネを腕にいだく権利すらも得られない。
 だからダリウスは、彼女を守った。

 しかし――。
 姉がエヴァイシュ帝国にやってきたあとが、問題だった。

 2人の共犯関係は、こちらがラシリネを手に入れるまでの間だけ。
 つまり、期間限定だ。
 最愛の聖女を手に入れた以上、ダリウスはアデラプス王国になど用はなかった。
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