追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
 ――だが、アオリは違う。

 彼女は自国の聖女として、今まで通り嘘をつき続けなければならない。
 自らが偽物だとバレた瞬間、その身に待ち受けるのは破滅だけ。

『魔具を頂戴!』

 その身を守るため、「これが最後だから」とでも言わんばかりにダリウスへ魔具を強請ったのは、彼女の意思だ。

(俺が彼女を裏切ったのではない。あの女が、自ら破滅の道を選び取った……)

 ラシリネのいる前で、「こんな提案を持ちかけてきたダリウスが悪い」と責任転嫁をされるなど冗談ではなかった。

(口を滑らせなければいいが……)

 ダリウスは姉妹の話し合いが終わるまで、アオリを「余計なことを言うな」と睨みつけ続ける。
 その甲斐あって、どうにかラシリネに2人の関係が露呈せずに済んだ。

(終わったか……)

 聖女が己の力を頼ることなく、自らの手で妹に渡した魔具を破壊し、問題を解決したのは寂しくもある。
 しかし、これはダリウスにとっても理想とも言える状況だった。

(ラシリネは長い間この国で心ない中傷に晒されてきたせいか、どうにも周りに遠慮しがちだった……)

 もしも母国から追放を宣言されなければ、ラシリネはこんなふうに妹や国王へ立ち向かえなかっただろう。
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