追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
(彼女は俺にとって、世界のすべてだ……)

 何よりも大切で、守りたくて、悲しんでいるよりも笑っているところがみたい。
 たとえ世界中の人々に嫌われたとしても、ラシリネさえ己を愛してくれさえすれば、ダリウスはそれで充分だった。

 だからこそ――。
 皇帝は彼女と強引に繋いだ指先を絡め合い、離れないように強く握りしめる。
 その後、倒れ伏す忌々しい存在達に背を向け、自国へ戻った。

 *

 黒いオーラは魔獣ではなく、人間にも悪さする。
 その発生源が魔具の発動であり、浄化には聖なる力が必要だと知ってしまった以上、禁呪を乱用するわけにはいかなくなった。

(闇のオーラを生み出した原因は、あの女だ。そう人々へ信じ込ませるためには、もう二度と人には余るこの力が外部に漏れ出ないようにしなければ……)

 ダリウスは保管庫へ厳重に鍵をかけた。
 自分以外の誰にも、触れさせないようにするためだ。

(あとは、ラシリネが真実に気づかぬことを願うしかないな……)

 裏で妹に甘い言葉を囁いて手を組み、都合が悪くなったら切り捨てたなど知られれば、己に向けられる愛は憎しみにも変化しかねない。
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