追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
(覚悟はしていたつもりだが、思っていた以上につらいな……)

 ダリウスが顔に出さないように気をつけながら、紫色の瞳を開閉して仕切り直そうとした時だった。

「ダリウス様?」

 明らかに様子のおかしいこちらの姿を見て、些細な表情の変化を読み取るのに長けた聖女が、不安そうにダリウスの顔色を窺う。
 その度に「なんでもない」と言って誤魔化すが、それもいつか限界が来るだろう。

「つらい時は、遠慮せずに打ち明けてくださいね。私は、待っていますから。いつまでも、ずっと……」

 ラシリネだって、いつまでも無垢な少女ではない。
 こちらの思惑を、なんとなく悟っているのだろう。
 彼女はどこか切なげに遠くを見つめると、困ったように金色の瞳を細めた。

(俺の準備ができるまで、無理に聞き出そうとしないあたりが、ラシリネらしな……)

 ダリウスは彼女が聖女と呼ばれるに相応しきその優しさに触れて、泣きたくなるのをぐっと堪える。
 ラシリネに対する言葉では言い表しきれない想いを伝えるべく、少女を抱きしめる力を強めた。

「ダリウス様!? どうしたのですか?」
「ありがとう……」
「どう、いたしまして……?」

 驚く彼女の耳元で囁けば、困惑しながらも背中へ手を回してくれる。
 それが何よりも、ありがたかった。
< 219 / 254 >

この作品をシェア

pagetop