追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
(彼女が俺に愛を返してくれる限り、エヴァイシュ帝国の皇帝でいられる……)

 たとえ心の中にどれほど醜い感情が渦巻いていると知っても、彼女なら受け入れてくれるかもしれない。
 そんな希望にも似た都合のいい予感をいだいたダリウスは、勇気を出して一歩を踏み出す。

「ラシリネ。俺と、結婚してくれないか」

 彼女が好きだ。
 愛し続けてほしい。
 失望されたくなかった。
 ラシリネを手に入れるためには、こうするしか道がない。

 恋人に対するさまざまな感情が浮かんでは消えていく度に、ダリウスは思う。

(こんなふうに思うのは、俺が彼女を心の底から愛し、切望しているからだ……)

 己の悪行が露呈した際の対処法は、その時になってから考えればいい。
 大事なのは過去ではなく、これからどうするかだ。
 自身の罪を恥じ、ラシリネを手に入れるために奔走していた昔とは違うのだと実感させられたら、なんとかなるかもしれない。

(そうやって自分の都合がいい方向に考えるから、思い通りにならなかった時の絶望がより深まるのだろうな……)

 ダリウスは過去を思い出す度に気が滅入ってしまう自分に「このままではいけない」と何度も言い聞かせ、彼女の返事を待った。
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