追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
(彼女の行く末に、幸多からんことを……)

 白、紫、ピンク。
 色とりどりのシラネアオイが美しく咲き乱れる中庭でアオリのことで頭がいっぱいになっていた聖女は、偶然通りかかった陛下に声をかけた。

「俺と、結婚してくれないか」

 その後、合流した彼からプロポーズを受けた瞬間、思考が停止した。

(こんなに早く、陛下のほうから夫婦になりたいと言ってくれるなんて、思わなかったわ……)

 自国の聖女としてつねに人の顔色ばかりを窺ってきたからこそ、他者の些細な表情の変化に敏感だ。
 だから、どれほど感情の起伏が乏しい彼が表に出さないように気をつけていたとしても、すぐに分かった。

(陛下は、何かを隠している。あの時から、ずっと……)

 10年前のあの日。
 彼の手を突っぱねて聖女として名乗り上げたのは、「何を犠牲にしても、ラシリネをそばに置いておきたい」と言う想いを感じ取ったからだ。

(直接、言ってくれたらよかったのに……)

 ダリウスはなぜか、己に対する想いを頑なに秘める方へ舵を切った。
 神が間に入って取り持ってくれなければ、2人は今もすれ違っていただろう。
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