追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「動かないでください!」
「も……!」

 こちらが慌てて再び謝罪をするため、声を発した時だった。

「――夫よりも先に、異性へ花嫁姿を見せるとは……。君は本当に、俺を嫉妬させるのがうまいな……」
「へ、陛下……!?」

 外側から扉が開き、紫色の瞳を苛立たしげに細めた彼の姿が視界に入る。
 ダリウスは胸元で両腕を組み、明らかに激怒していた。

(この日のため、正装に身を包んでくださったのに……。これでは、台無しだわ……)

 ラシリネはどうすれば皇帝の機嫌を治せるのかがわからぬまま、おろおろと視線をさまよわせるしかない。

「あらあら。予想よりも準備ができるの、早かったみたいね?」
「なぜ俺に無断で、画家を呼んだ」
「殿方だと知ったら、許可など得られないでしょう?」
「当然だ」
「彼、早筆で有名なのよ。粗方下書きが終われば、あとは画廊に籠もって作業してもらう約束なの」
「母上……」
「これは大帝国の守護聖女として名を後世に残すため、必要なことなのよ! わかって頂戴!」

 義母から説明を受けても、ダリウスは納得できない様子を見せた。
 しかし、下書きを確認した直後、彼の顔色が驚きの表情へと変化する。
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