追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「完成した絵は、真っ先に見られるんだろうな」
「もちろんよ! 報酬は、完成品と引き換えという契約ですもの」
「なら、いい」

 どうやら、画家の描くラシリネの絵は、あれほど難色を示していた皇帝が即座に態度を軟化させるほどに素晴らしい出来であったらしい。
 聖女は苦笑いを浮かべながら、危機を察して帰り支度を始めた画家へ話しかける。

「完成するのが、楽しみです」
「ご期待に添えるよう、精進いたします。では、私はこれで……」

 男性はダリウスに睨みつけられながら、大切そうに描きかけの絵を布に包んで背負い、去って行った。

「世界で一番幸せを感じるべき新郎新婦が、そんな顔をしていてどうするの?」
「誰のせいだと、思っているんだ……」
「民に心配をかけたくないのであれば、式が始まるまでにきちんと幸せいっぱいな姿を見せること! それじゃあ、わたくしは席を外すわね」
「お、お義母様……!?」
「おいで、スノーエル。こっちよ!」
「わふん!」

 彼女は怒りを隠しきれない様子の息子とこのまま一緒にいたら、さらに彼の機嫌を損ねてしまうと考えたのだろう。
 神獣に合図を送ると、こちらにウインクをしてから出て行ってしまった。
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