追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
 ダリウスは封筒に入った便箋が山となった頃を見計らい、仕事を中断して蝋印を押してくれた。

(打ち合わせもせずに、当然のように息をぴったり合わせて作業をする……)

 ラシリネは暇つぶしに呼んだ本の一節を思い浮かべ、ポツリと声に出す。

「まるで、愛の共同作業ですね!」
「ぶ……っ」

 どうやらその言葉は冷静沈着な皇帝を驚かせるのに充分だったようだ。
 蝋燭の炎で熱し、液体状になった蝋をテーブルの上に誤って垂らしてしまい、狼狽えているのが印象的だった。

「へ、陛下!? 大丈夫ですか?」
「わふ?」

 聖女が大きな声を出して夫を心配したため、部屋の隅で目を瞑って大人しくしていたスノーエルまで不思議そうに寄ってきた。
 彼は神獣へ恨めしそうな視線を向けたあと、「なんでもない」と言うように頭を振る。
 その後、息を吹きかけて蝋燭の火を消すと、ダリウスは俯きがちに低い声で呟いた。

「今のは、反則すぎるだろう……」

 顔を覆っているせいで表情は見えなかったが、夫の様子をじっと観察していたラシリネにはわかる。
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