追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
 偶然妹が魔具を手にして偽聖女として名乗りを上げていなければ、そんなふうに崇め奉られることはなかっただろう。
 ましてや、歴史になお刻む伝説の聖女になるなど、もってのほかだ。

「本当の私がどういう人間であるかは、ダリウス様が一番よく知ってくださっていますもの」
「ああ」

 ラシリネが何を愛し、不条理を嘆き、心を痛めるのか。
 それを知る人間は、夫だけでいい。

(私はこれからも、人々を欺くことになるでしょう……)

 自分は有能でもなんでもない。
 その自覚があるのに、周りの人間から必要以上に祭り上げられたら、いつかはきっと無理が祟る。

 たとえ、そうだとしても――。

 民に心配をかけるわけにはいかないと気丈に振る舞い、自分はいつまでもこの国の聖女であり続けるのだろう。

「聖女が恋をするのは、罰を受けるべき行いでなく、祝福されるべき行動です」
「そうだな……」
「私はそれを、己の身を使って実現する生き証人となりましょう」
「ああ」

 金色の瞳に確かな決意を宿して告げる己の姿を目にしたダリウスが、「君は1人ではない」と言うかのように指先を絡める。
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