追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「まったく、あの2人と来たら……」

 ダリウスは憤慨の色を隠せない様子で、自分と腕を絡めたまま廊下を歩く。
 ラシリネはこの状況が、気が気ではない。

(陛下の想い人にこの状況を見られたら、大変なことになるわ……!)

 早く「密着するのは止めてほしい」と自ら声を上げるべき状況なのに、大好きな人から腕を絡めてもらった喜びを少しでも長く噛み締めたくて、尻込みしてしまう。

(私はなんて、卑しい存在なのかしら……)

 心の中ではまだ見ぬ彼の想い人との仲を祝福する気でいたくせに、その姿が確認できない間は昔馴染み以上の関係を目指してアプローチを続けたいと行動するなど、矛盾している。

 ラシリネは自己嫌悪に陥りつつ、名残惜しさを感じながら彼と絡めた腕を離そうと試みた。

「俺とこうして密着するのは、嫌なのか?」

 しかし――。
 切なげに細められた紫色の瞳にじっと見つめられたら、嘘などつけるはずもない。

「い、いえ……」
「なら、このままでいいだろう」

 思わず「そんなことはない」と言わんばかりの言葉を口にすれば、腕を絡め合う力が強まった。
 さすがにこの状態で陛下の目を盗み行動に移せば、「俺はラシリネに嫌われている」と勘違いをされかねない。
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