追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
2・魔獣と解任式と毒
 ラシリネは解任式の準備が終わるまで、執務室の隣に設置された仮眠室で過ごすことになった。
 壁の中央に開けられた小さなのぞき穴から、いつでも互いの姿を見られるようになっている。

(陛下からは、自由に動き回っていいとは言われているけれど……)

 ラシリネは聖女として自国で暮らすようになってから、長い間飲まず食わずで祈りを捧げる生活が当たり前になっていた。

 だからこそ、じっとしているのは苦ではない。
 彼の目の届かない場所を歩き回り、トラブルを起こすのは避けたかった。

(陛下の麗しきお姿を、じっと部屋に籠もって観察しているのが一番ね……)

 こうしてラシリネは、のぞき穴から静かに書類仕事に追われる皇帝の姿を観察している。

(最愛の殿方を好きなだけ、遠くから眺めていられるなんて夢のようだわ……)

 誰にも邪魔をされることなくダリウスの一投足を見続けても文句の1つも言われずに黙認されるなど、夢のようだ。
 ラシリネはうっとりと金色の瞳を和らげ、思う存分堪能する。
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