追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「お呼びでしょうか……?」
「隣の部屋から隠れてこそこそと監視するくらいなら、ここにいればいい」
「で、ですが! 私はこの帝国の出身者ではないですし……! 部外者ですから。忠臣に、何を言われるか……」
「俺が認めたんだ。文句は言わせんよ」

 彼は優しく紫色の瞳を和らげると、執務机の隣に置かれた丸椅子を指差し、こちらに促した。

「ここに座るといい」
「陛下の想い人が、このお部屋に姿を見せたら……。勘違いをされてしまいますよ?」
「構わん」

 彼は左右に首を振って、静かに声を発した。
 ダリウスが好きな女性は、隣に聖女がいるだけで憤慨するほど嫉妬深い人物ではないと確信を持っているようだ。
 そんな発言を受け、ますます彼の寵愛を受ける女性がどんな人物なのか気になって仕方がなかった。

(私とは比べ物にならないほどに美しく、聡明で、素敵な方なのでしょうね……)

 ラシリネは遠い目をしながらまだ見ぬ女性の姿を朧気に空想し終えたあと、開いている丸椅子に浅く腰かけた。
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