追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「もっと、深々と腰を下ろせばいいだろう」
「いえ……! 陛下の想い人がいらっしゃったらすぐ立てるよう、準備をするべきですので!」
「まだ、そんなことを言っているのか……」

 ダリウスは納得がいかない様子で難色を示しているが、こちらだって一歩も引くつもりはなかった。

(私は陛下とまだ見ぬ女性の仲を、応援すると決めたんだもの。邪魔にならないように、立場は弁えなければ……!)

 ラシリネが膝上に置いた指先をぐっと握りしめて人知れず決意すると、彼は再び書類仕事に集中し始めた。

(ああ……。近くに寄ると、一段と美しさが際立って見えるわ……!)

 喜びを声に出し、仕事の邪魔をするわけにはいかない。
 表情に出さぬよう気をつけながら、ラシリネは思う存分彼の仕草を至近距離で堪能した。

「ラシリネ」
「はい!」
「俺がいいと言うまで、席を立つ必要はない」
「わかりました……?」

 ダリウスから意味不明な命令を受け、不思議に思いながらも頷いた直後、事件は起きる。
 ドタバタと廊下から慌ただしい足音がこちらに近づいてきたあと、ドアを蹴破るような勢いで完全武装をした王立騎士団の団体が姿を見せたのだ。
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