追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「そのお気持ちだけで、充分ですよ」

 ラシリネは彼の胸元を優しく押し返すと、あえて自らの意思で後方に下がる。
 こうして、距離を取った。

「ラシリネ……」

 自分は今、宙ぶらりんの状態だ。
 解任式を終えるまでは、神から自国の聖女として認識されている可能性が高い。

(儀式を終えたら、私は本当の意味で自由になれる……)

 聖なる力を再びその身に宿して帝国を守るか、自国を追放された哀れな元聖女と蔑まれて余生を過ごすか。
 おそらく、己が歩むべき道は2つに1つだ。

「これからのことは、今すぐに答えを出すつもりはありません。ゆっくりと、考えてみたいと思っています」

 ラシリネは、紫色の瞳を切なげに潤ませる彼を安心させるように、満面の笑みを浮かべて告げた。

「それまで、私の成長を見守ってくださいませんか?」
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