追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
(これ以上、彼に迷惑をかけるわけにはいかないわ……)

 ラシリネは金色の瞳に確かな決心を宿らせると、口元を綻ばさせてダリウスから身体を離した。

「行ってまいります!」

 暗い顔をしていたら、神に気分を害されてしまう。
 こういう時こそ明るく元気でいるのが一番だと考え直すと、ひらひらと手を振って神聖なる儀式の場に一歩足を踏み入れた。

 そこは部外者が侵入すればすぐにわかるよう、水で満たされている。
 中央に向かって歩みを進める度にピチャン、ピチャンと一定のリズムで水音が響く。

 ラシリネは就任式で一度、神々と対面した際にこの手順を経験していた。
 二度目ともなれば、慣れたものだ。

「天に住まう我らが神よ。どうか、聖女ラシリネの呼びかけにお答えください……」

 目的地に到着してすぐにその場で立ち止まり、跪く。
 胸元で両手を組んで祝詞を紡げば、あとは神々の到着を待つだけだ。
 聖女としての資格を失っていれば、どれほど呼びかけたところで、超常なる神々しき存在は現れない。

 しかし――。

 陛下の推察通り、今もまだ自国の聖女として扱われているのであれば――彼は姿を見せるだろう。
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