追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
 自分では、判断できなかったからだ。
 神獣も同じように彼をじっと見つめたあと、嬉しそうな声を響かせる。

『わかった! 私が、一肌脱ごうじゃないか!』

 獣は何かを閃いたようで、祝詞を口ずさむ。
 その直後、頭の中で張り詰めた糸がパチンと勢いよく切断されるような感覚をいだいて面食らう。

(母国との繋がりが、断たれた……)

 聖女に任命されてから10年間、国中を覆うように結界を張り巡らせていたのだ。
 今まで当たり前だったものと切り離されたせいか、このうえない消失感に苛まれる。

(こんなふうに悲しんでほしくないから、神様も帝国の聖女になればいいと勧めてくださったのかもしれない……)

 不可思議な神の提案が実は筋の通ったものだと知り、なんとも言えない気持ちでいっぱいに包まれた直後のことだった。

『あんたは今から、聖女見習いだ!』
「そ、それは一体……。どう言う……?」
『この器はお目つけ役として、あんたのそばに置いておく。エヴァイシュ帝国の聖女になれる日が来るまで、頑張ってくれよな!』
「あ、あの! 神様! もう少し、詳しい説明を――」
『あばよ!』

 明るい声で別れを告げた神は、天に帰ってしまったようだ。
 その場には、不思議そうにこちらを見つめる獣だけが残る。
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