追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「スノーエルと暮らし初めてから、君はよく笑うようになったな」
「そうでしょうか……?」
「ああ。とてもいい傾向だ」

 自分では気づかぬうちに、笑顔が増えていたらしい。
 陛下から思わぬ指摘を受けて面食らっていると、再び獣が「やっぱり私のおかげだろ?」と期待を込めた視線をこちらへ向けてきた。

「陛下に喜んでいただけたのなら、よかったです」
「わふ!」

 ラシリネは渋々獣の頑張りを褒める気になり、優しく胴体を撫でつけた。
 嬉しそうな鳴き声を上げるあたり、ようやく満足してくれたらしい。
 スノーエルは、足元でおとなしくなった。

(やっと、陛下と落ち着いて話ができそうね……)

 こちらがほっとしたのも束の間。
 すぐさま書類から顔を上げた陛下から、疑問が飛んできた。

「俺が機嫌をよくしていなければ、褒められた気がしないのか?」
「ダリウス様が嬉しそうにしている姿を見るのが、私の幸福ですから……」

 最優先するべきは、己の意思ではなく王族の命令だ。
 ラシリネはずっと、そうやって生きてきた。
 だからきっと、癖になってしまっているのだ。
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