追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
(死にたくない、な……)

 彼の笑顔を見てから命を終えたかったが、今となってはどうしようもできない。
 ラシリネはこの場で死に至る運命を受け入れ、息絶えた――はずだった。

「だから言っただろう。あんな国で聖女の才を見出されても、ろくなことにならないと」

 呆れたように紡がれた、聞き取りづらいテノールボイスが、あたり一面に木霊する。

 姿を見せた男性は、ラシリネに襲いかかる獣達を危なげなく討伐すると、「こうなるのは予測済みだった」と言わんばかりに、眉を顰めた。

「ダリウス、様……」

 彼と最後に顔を合わせたのは、10年も前だ。
 少年から立派な好青年に成長して、明るく元気な声はいつの間にか低く男性らしい声音に変化している。

 なのに――。

 ひと目見ただけで想い人だと気づけたのは、「最期に会いたい」と強く願っていたからなのだろう。

(私の救世主……)

 彼はいつだって、己の危機を救おうとしてくれる。
 そんなダリウスのことが、自分は大好きだった。
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