追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
 しかし――。
 聖女が人間に恋をするのは許されても、その想いを通じ合わせることはできない。
 ダリウスのそばにいることを選べば、いつかはきっと相思相愛になりたいと願ってしまう。
 そんな気がしたから、あえて離れる決断をしたのに――。
 彼はこうして、再び己の前に姿を見せてしまった。

「俺に嫁ぐ準備は、できたか?」

 ダリウスは優しく口元を綻ばせ、ラシリネを挑発した。
 その表情だけは、当時となんら変わりはなくて……。

(伝えたい。あなたが好きだと……)

 ラシリネはあの時言えなかった想いを口にしかけ、ぐっと堪える。
 いくら自分が自国で聖女としての任を解かれたとしても、己の身に聖なる力が宿っているからだ。

(でも、言えないわ……)

 ラシリネは一度、神に操を立てた。
 彼に好意を伝えるのは、天に住まう超常的な存在に対する裏切りと取られかねない。
 自分だけではなく、ダリウスにも天罰が下る可能性が高かった。

(彼の気持ちには、応えたい。でも、そんなことをしたら……。一体私は、どうしたらいいの……?)

 聡明な彼のことだ。
 こちらが困惑の色を隠せぬまま、金色の瞳に涙を溜めてじっと黙りこくっている理由を悟ったのだろう。
 ダリウスはラシリネに向かって、反省した様子でぽつりと呟く。
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