追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「ラシリネちゃんはもう、聖女ではなくなったのよね……? どうして、聖なる力で神獣を癒せたの……?」
「神は彼女に、この帝国を守護させたいようだ」
「今さら、聖女などいらんだろう」
「ああ。俺もそう思う。だが、神の考えは異なるようだ。今、ラシリネは聖女見習いという扱いになっているらしい」

 ラシリネが神獣と抱き合って無事を喜んでいる間に、皇帝が両親へ己の置かれている事情を簡単に説明してくれた。
 彼らの表情が曇ったのは、己が聖女でなくなることを心から望んでくれていたからなのだろう。

(王家のみなさんは、本当に優しい方たちばかりね……)

 少女は大型犬と無事を分かち合いながら、彼らの話し合う姿へ静かに耳を傾けていた。

「自らを守護し、他者の傷を癒やす……。ハズレ聖女などと汚名を着せられていたのが嘘のような大活躍ぶりではないか?」
「そうよねぇ。この話がアデラプス王国に出回れば、面倒なことになりそうだわ……」
「箝口令を敷く」

 陛下の静かな決定に同意をした夫妻の顔色が、一気に険しいものへと変化した。
 ラシリネはそこでようやく彼らのただならぬ雰囲気を悟り、スノーエルを抱きしめる力を強めた。
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