追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「ラシリネ!」

 神獣を追いかけ、鍛錬上にやってきてからどのくらいの時間が経過しただろうか?
 後方から皇帝が自らの名を叫ぶ怒声が聞こえてきた直後、全身を震え上がらせる程に驚いてしまった。

「ひゃ、ひゃい!」
「わふ……」

 ラシリネが素っ頓狂な返答をする中、珍しく足元で大人しくしていたスノーエルが「やっと来たか」と呆れたように鳴き声を響かせる。
 ずんずんと大股開きでこちらにやってくる皇帝の姿は、今まで目にしたことがないほどに険しい。

(お、怒っていらっしゃるわ……!)

 今すぐに神獣を連れて逃げ出したいが、いつもは元気いっぱいに走り回っている獣が「諦めろ」と言わんばかりに目を閉じたあたり、どうしようもない。

(私ができるのは、彼に誠心誠意謝罪をすることだけ……!)

 己を正当化して「自分は悪くない」と言わんばかりの態度を取ったところで、ますます彼の機嫌が急降下するだけだ。

(先手必勝よ!)

 ラシリネはダリウスが激昂している理由を知らぬまま、勢いよく頭を下げるために俯いたのだが――。

「も……」
「無事で、よかった……」

 こちらが謝罪の言葉を口にする前に、小さな身体は逞しい腕にすっぽりと抱きしめられてしまった。
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