追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
(大好きな人と触れ合えるなんて、夢のようだけれど……!)

 こんな姿を彼の想い人に見られてしまえば、大きなトラブルに発展する。
 ラシリネはこのまま、滅多に感じられない大好きな人の暖かなぬくもりを感じていたい気持ちでいっぱいになりながらも、慌ててその腕から抜け出ようと試みた。

 しかし――。
 強い力で抱きしめられてしまえば、叶わない。

「俺の預かり知らぬところで、君がこの帝国を守護する聖女になると決めていたら……どうしようかと……」

 さらに、明らかに弱っているとわかるようなか細い声が耳元から聞こえてきたのだ。
 このままここで拒絶を続ければ、陛下はもっと悲しむ。

(陛下がこんな行動に出たのは、私を心配してくださったからなのね……)

 ラシリネは優しく口元を綻ばせると、無理に腕から抜け出ようとするのは諦め、彼を諭す方向へ舵を切った。
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