追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「陛下は私にとって、命の恩人ですから……。その時は、きちんと相談をしてから決めるつもりです」
「本当は聖女になど、なってほしくなかったんだ……。これからは、1人の女性として、幸せになってほしい。なのに……」
「そんなふうに思って頂けるなんて……。私は、果報者ですね」

 冗談めかして微笑んだのは、あまりよくなかったようだ。
 ラシリネの背中に回す腕を外した彼は、「心外だ」と言わんばかりにこちらへ凄む。

「嘘じゃない。本心だ」
「はい。疑ってなど、おりません。そのお言葉、ありがたく頂戴いたします」

 ムキになると、幼い頃の愛らしさが増すような気がする。

(こういうところも、素敵よね……)

 ますます彼に対する好意を強めながら、ゆっくりと身体を離した。

「俺がいない時に外出をする際は、使用人に一言伝えてからにしてくれ」
「わかりました」

 激昂した状態で姿を見せた時は、どうなるかと思ったが……。
 こちらを抱きしめて満足したのか、陛下は普段通りの様子に戻っている。
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