追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「質問が、あまりよくなかったな」

 彼は魔物を退けた剣の切っ先を腰元につけた鞘に収めると、こちらに危害を加えるつもりはないのだと行動に示す。

 その後、ゆっくりと開いている手を差し出した。

「俺の手を取れ。君はもう、アデラプス王国の聖女ではなく――。聖なる力を持って生まれた、ラオイドル公爵家のご令嬢だ」

 その手に自ら触れたいのは山々だが、ラシリネにはその選択を選び取れない理由がある。
 だからこそ、全身を小刻みに震わせて左右に首を振る。
 そして、おびえた様子で拒絶の言葉を吐き出した。

「わ、私は……。自国から、追放された身ですよ……? 家名を名乗る資格すら、ありません……」
「だから、どうした」
「本来であれば、ダリウス様とこうして言葉を交わす資格だって……!」
「俺が望んだ。誰にも、文句など言わせんよ」

 彼の国を追放された自分は、すでにただの人だ。
 貴族の生まれであったとしても、今となってはなんの意味もない。
 だからこそ、どれほど隣国の皇太子から望まれようとも、彼の手を取る資格などなかった。
 なのに――。

「殿下……」
「ほかに、気になることは?」

 こちらがどれほど彼と一緒にいられない理由を並べ立てたところで、ダリウスは引き下がるつもりはない。
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