追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「陛下のおかげで、なんともありません!」
「俺は何もしていない。君がいなければ、今頃……」

 彼は己の無力さを嘆き、悲しそうに目を伏せた。

(少し押されたくらいで、大袈裟だわ。無事に魔物を退けたのだから、そんな表情をする必要はないのに……)

 ラシリネは少しでも陛下に自信を取り戻してほしくて、ダリウスにそっと寄り添った。

「先程の魔物は、明らかに様子がおかしかったではありませんか。無事に退けられただけ、よしとするべきです」
「だが……」
「今は己の力不足を嘆くよりも、今後どうするかを決めるべきかと」

 障壁がきちんと張り巡らされていれば、彼らの侵入を防げる。

 しかし――。

 この帝国は、ほかの国とは違って聖女がいない。
 今のままではあのような漆黒のオーラを身に纏った獣の大群が攻めてきた場合、王立騎士団でも対応できない可能性が高かった。

「私が結界を張れば、この帝国で暮らす人々が恐怖に怯える必要はなくなります」
「それだけは、止めてくれ」
「エヴァイシュ帝国の聖女になるべきだと、神も望んでいるのですよ?」

 この領土と民を守れるのが自分しかいないのならば、喜んでその身を差し出すべきだ。
 そんなこちらの主張を、陛下はどうしても受け入れられないらしい。
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