追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
(真実が明らかになったところで、今さらこの国を守護するのを止めたいですなんて、言えないわよね……)

 彼と相思相愛なのであれば、ダリウスに対する想いを内に秘める必要がなくなる。
 声を大にして、大好きだと伝えてもいいのだ。
 その場合は神の意思に背くことになるため、聖なる力は失われる。
 最悪の場合は、天罰が下るだろう。

(黒いオーラを纏った魔獣は、聖なる力を持つものではないと浄化できない……)

 ラシリネが己の幸せを優先すれば、今まで通りこの帝国に防壁を張り巡らせる聖女がいない状態で迫りくる魔獣と交戦する羽目になる。
 彼らとの戦いは、困難を極めるだろう。

(陛下と想いを通じ合わせたとしても、その幸せが一瞬だけでは意味がない……)

 やはり自分は民を守るために、聖女としてこの帝国にすべてを捧げるべきなのだ。

「勘違いを正してくださり、ありがとうございました」
「いいのよ。お礼なんて。わたくし達は、2人が幸せになる未来を望んでいるだけですもの……」

 ラシリネは身を引く決意を固めると、彼女に謝辞を送る。
 皇太后は恐縮した様子で口元を綻ばせると、「子ども達の行く末が幸福でありますように」とでも言わんばかりにどこか遠くを見つめた。
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