追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「もうすぐ、就任式が行われるわ。それまでに一度、息子と腹を割って話をするべきよ」
「お気持ちだけ、受け取っておきますね」
「駄目よ! きちんと、ダリウスと向き合って!」
「これ以上険悪な雰囲気に、なりたくないのです」

 大好きな人の母親が、己のためを思ってアドバイスをしてくれたのだ。
 できることなら、叶えてやりたかった。

 しかし――自らの歩むべき道が真っ暗闇だとわかっている方向へ進んで後悔した経験のある自分は、もうしたくないと思ってしまったのだ。

 だからこそ、誠心誠意謝罪をすることしかできない。

「せっかく相談に乗って頂いたのに……。申し訳ございません」
「誤解を正しても、あなたの意思は変わらないのね」
「はい。私は陛下のために、この帝国の聖女となります!」

 彼女に頷いた金色の瞳に、迷いはない。

(1人で悩んでいた時よりも、この帝国を守りたいと思う気持ちが強くなった気がするわ……)

 ラシリネは満面の笑みを浮かべ、赤紫色の瞳を悲しそうに伏せた彼女と、スノーエルを連れて別れた。

「ダリウスはあなたが聖女になるのを、望んでいないのよ……」

 前皇后が苦しげに口にした言葉に、気づかぬまま……。
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