追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
 なのに――。
 遅れを取った結果、「この帝国にも聖女が必要だ」と想い人に思わせてしまった。
 あれは明らかに、己の失態だった。

「俺が、もっと強ければ。あのような情けない姿を晒さなければ。ラシリネが、聖女になるなどと手を挙げずに済んだ……」

 たった一度の選択ミスが、2人を隔てる分厚い壁に変化してしまったのだ。
 10年前に涙が枯れるほどに後悔し、「もう二度と同じ過ちを繰り返してなるものか」と己を奮い立たせたはずなのに……。
 ダリウスは再び、岐路に立っている。

(再び聖女になった彼女を神の元から奪い取ろうと目論めば、今度こそ天罰が下るだろう)

 帝国民達は「聖女がいない分だけ、自分達が頑張ればいい」と必死に身体を鍛えているが、それは皇帝の機嫌を損ねないようにと計算し尽された建前だ。
 本音はいつだって、たった1つだけ。

『他国のように、聖女様のお力を得られれば……俺達だって、こんなにつらい訓練を続けて身体を痛めつけなくたっていいのにな』

 己の最愛を犠牲にして、自分達だけは平穏な生活を享受したい。
 そんな生半可な考えを持つ輩が自国で暮らしているなど、反吐が出る。
 片っ端から嘘発見器にでもかけて、追い出したいくらいだ。
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