追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
 しかし――。

 たとえ自分がこの帝国の最高権力者であろうとも、そんなことをする資格がない。
 聖女としてこの帝国へ尽くそうと手を上げた女性がラシリネでさえなければ、「己の負担が軽くなる」と両手を上げて喜んだはずなのだから……。

「俺はいつだって、自分が傷つくことを恐れ、保身に入る……。彼女に愛を囁く価値のない人間だ……」

 自分が彼女に愛を囁く資格のない人間だ。
 それでもラシリネに手を伸ばし、腕に抱きたいと願い続けるのは――。

 やはり、彼女がそれだけ魅力的な女性だと言うことなのだ。

「必要以上に自分を責めるのは、よくないと言っているだろう」
「だが!」
「10年前とは、また状況が異なる。ラシリネ嬢は今、戦争でも仕掛けぬ限りは手が出せぬ隣国ではなく、自国の聖女だ。神を欺き、愛を育める可能性はあるぞ?」
「俺が一方的に彼女に愛を囁いたところで、なんの意味もない……。好きになってもらわなければ……」

 彼は必死に憂鬱な気持ちでいっぱいになったダリウスの気分を上昇させるべく言葉を尽くしてはくれた。
 だが、己の心には響かない。
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