追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
(もう駄目だ……)

 何もかも諦めたくなる気持ちは、普段であれば心の奥底に沈めて鍵をかけて、見ない振りをしていた。
 皇帝が情けない男だと、民や想い人に知られたくなどなかったからだ。

 しかし――。

 ここには、気心のしれた父親しかいない。
 彼は息子の意気消沈する姿を見ても、周りに言いふらすような男ではなかった。

 ダリウスは思う存分、ボソボソと聞き取りづらい声で弱音を吐き出した。

「俺には無理だ。たとえ演技でも、ラシリネに心ない言葉をぶつけるなど……。無視するのが精一杯な状態では、愛してなどもらえない……!」
「暴力的で性格に難のある男性が好きだと、面と向かって言われたのか?」
「俺は何10年も前から、彼女を愛しているんだぞ……!? そんなの、口にされずとも手に取るようにわかる……」
「貴様らはなぜこうも、お互いのことになると周りが見えなくなるのだ……?」

 父親は心底不思議で仕方がないとぼやいていたが、ラシリネが好きすぎてどうにかなってしまいそうな状態のダリウスに彼の言葉は届かない。
 まるでこの世の終わりだと言わんばかりの絶望顔で全身を小刻みに震わせ、低い声で呪詛を吐き出す。
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