追放されたハズレ聖女が皇帝の寵愛を受けたら、大帝国の守護聖女と呼ばれて伝説になりました
「シラネアオイのように美しく可憐な少女を妻として娶りたいなど、不相応な願いをいだいた俺が悪かった……。やはり、この恋心は彼女に伝える前に捨て去るべきだ……」

 追放されたラシリネを自国へ連れ込み、四六時中そばに置いてご満悦な態度を見せていたとは思えぬほどに落ち込みように、父親も呆れて物が言えないらしい。

「行動すらしようともせず、愚痴を零すしか脳のない腑抜けに我がかける言葉など何も無いない。鍛錬の邪魔だ」

 父親は青紫の瞳を苛立たしげに細めて喝を入れると、そのまま己を追い出してしまった。

(有力な情報は、何も得られなかった……)

 これは自分と彼女の問題だ。
 なのに――周りを巻き込んで楽になろうとするからバチが当たったのだろう。

 ダリウスは頭を冷やすべく、トボトボと足取り重く帰路につく。

(合わせる顔がないな……)

 父親の前では「ラシリネを好きで居続けるのはやめる」などとぼやいたが、そんな気は毛ほどもなかった。
 彼女の存在は、今では己の一部と化していたからだ。
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